しらせは,わざわざオングル島の南側を回って,昭和基地に接近する.

それは,大気の観測への影響を少なくするため,というのが理由のひとつと聞いている.

私の仕事のひとつは,大気のモニタリング観測の保守点検作業で,温室効果ガスやエアロゾルを対象にしている.

南極の空気は綺麗で,吐く息が白くならない.大気中に塵芥が少ないのが理由である.それだけ南極は綺麗なのだ.そこへ,ひとつの工場のごとく大型船がやってくるのだ.大気が通常と異なってしまうことは避けられない.それでも観測に影響のない場所に接岸してくれている.本来であれば,基地の直ぐ側まで着きたいであろうにと思う.

そんなしらせが,船の向きを変え始める.回頭して船首を反対にして隠れてくれるかと思いきや,こちらに船尾を向けたまま停泊している.

風向きによっては,観測に影響の出る位置だ.観測条件の悪化に唖然とするものの,前任者は風を常に考えて,輸送業務の流れを意識して,しらせが居ても,しらせの影響のない南極の大気のデータを取るべく,努力を怠らない.そうやって南極観測は引き継がれて来たのだと背中が語る.そして,2月からは,私がその責任者となるべく,引き継ぎ作業は続くのである.

 

接岸時のしらせ.見晴らし岩の向こう側に隠れている
接岸時のしらせ.見晴らし岩の向こう側に隠れていて,観測への影響は少ない(通信室から撮影)